カウンセリングについて考える(6)

 (6)「響存」としてのカウンセラー

 さてここで私は唐突かも知れないが,「響存」という言葉を紹介したいと思う。これは鈴木 亨という日本人の哲学者が、西欧哲学の「実存」に対して提唱されたユニークな人間観なのである。氏の言葉を引用して、簡単に言うと 

 「空の大悲が宇宙を貫いて響き渡る(per-sonare)ことに促されて、人は人格(person)となり,倫理的になるのです。それが私の「響存」です。そうでなければ我々が人を愛するとか、そういうことの人間的な意味での性愛とか、他者を悲しむということは出来ません。人間は本来受動的なもの。その大悲の働きを受けて我々がそれを責任と感じ、それから献身しようと思い、そして他者への憐み、他者への救いを何ほどか実現しようという働きが起こってくるのです。」

ということになる。

 これは実に深くてしかも含蓄のある考え方である。そしてこの一節は、私たちカウンセラーの営みの中核的な営みを見事に解き明かしてくれていると私には思えるのである。何故なら、宇宙の大悲に響き合う人間は人間同士でも響き合える筈でありCLの心の感情をくみ取って響き返すというカンセリングの最も重要な「共感」の営みは、まさに「響存」の姿を具現するものであるからである。私は前の章のどれかで、人間が自分の体験としての感情を真に味わうためには、一人でやろうとしても十分ではなく、必ずそれを誰かに聴いてもらいながら受容し、それを響き返してもらう――つまり「共感」してもらうのが最も効果的であり、また必要であることを述べておいた。そのような人と人との「共感的」関係と、更には、自分と心の内なるもう一人の自分との照応関係とに生きる人間を表すものとして、「響存」という言葉は誠に相応しいものだと私は思う

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